夜中、ふくらはぎに突然の激痛が走って目が覚める。明け方、伸びをした拍子に足がつる。夏になると、なぜか足がつりやすい——。こむら返りは、経験した人でなければ分からないつらさがあります。足立区梅島・はりきゅうはれ梅島院にも、繰り返す足のつりに悩む方が来られます。この記事では、なぜ足がつるのかを現代医学と東洋医学の両面から整理し、つりにくい身体づくりに鍼灸でできることをお伝えします。

まず、つってしまったときの対処から。あわてず、つった筋肉をゆっくり伸ばすのが基本です。ふくらはぎなら、膝を伸ばしたまま、足先を手前(すね側)へゆっくり引き寄せます。反動をつけて無理に伸ばさないこと。おさまってきたら、軽くさすって温めてください。

夜中に足がつって目が覚める ─ こむら返りとは

こむら返りは、医学的には「有痛性筋痙攣」と呼ばれます。ふくらはぎ(こむら)の筋肉が、自分の意思とは関係なく突然強く縮み、激しい痛みを伴う状態です。ふくらはぎに多いものの、足の裏や足の指、太もも、すねにも起こります。数秒から数分でおさまりますが、そのあとも張りや痛みが残ることがあります。

筋肉には、伸び縮みを感知するセンサーがあり、筋肉が縮みすぎないよう調整しています。このセンサーの働きが乱れると、筋肉が過剰に縮んで暴走してしまう——これがこむら返りのしくみです。誘因としてよく知られるのが、脱水と水分不足、マグネシウムやカルシウムなどのミネラルの不足、冷えによる血流の低下、筋肉の疲労、そして加齢による筋肉量の減少です。

夜と夏につりやすいのはなぜか

こむら返りが夜間に多いのには理由があります。就寝中は水分をとらないため脱水ぎみになり、さらに寝ている姿勢では足首が伸びて、ふくらはぎの筋肉が縮んだ形のまま保たれやすいのです。日中に足がむくみやすい方ほど、夜に下肢の水分が移動して、つりやすくなります。むくみとつりが地続きであることは、足のむくみと鍼灸の水分代謝の視点とも重なります。

そして夏。汗を大量にかけば、水分とミネラルが失われます。そこへ冷房や冷たい飲食が加わると、下肢が冷えて血流が落ちます。「夏の脱水」と「冷房の冷え」が同時に効いてくるのが、夏のこむら返りの特徴です。冷房による冷えについては冷房病・クーラー病と鍼灸、もともと足が冷えやすい方は足の冷えと鍼灸もあわせてご覧ください。

東洋医学は「肝は筋を主る」と考える

ここからが、東洋医学ならではの視点です。「水分もミネラルもとっているのに、それでもつる」——そんな方に、もう一段深い読み方があります。

東洋医学では、こむら返りを古くから「転筋(てんきん)」と呼び、筋を司る「肝」と、筋を養う「血」の問題として読んできました。「肝は筋を主る」——筋肉や腱、靭帯といった全身の筋の働きは、肝が司ります。そして「肝は血を蔵す」——肝は血を貯え、必要に応じて全身へ配ります。肝から十分な血が届いていれば、筋はしなやかに伸び縮みします。

逆に、疲労やストレス、睡眠不足、胃腸の弱りなどで肝の血が不足すると(肝血虚)、筋は栄養を失い、こわばり、ひきつり、けいれんを起こします。いわば筋肉の栄養不足です。脱水やミネラルという現代医学の説明に、「筋が血で養われていないから引きつる」という角度を足すのが、東洋医学の見方です。

この視点で見ると、夜と夏につりやすい理由も違って見えてきます。夜、横になると血は肝に帰るとされ、末端の筋への配りが手薄になります。もともと血が足りない方は、この時間帯に筋が養われず、つりやすくなるのです。夏は大量の汗で「気」と「津液(潤い)」を消耗します。血や潤いが減れば、筋は乾いて縮みやすくなります。さらに冷房で下肢が冷えれば、東洋医学のいう「寒は縮ませる」性質そのままに、筋がぎゅっと収縮します。

血・潤い・冷え ─ その人がつる背景

同じこむら返りでも、背景にある身体の状態は人によって違います。

疲れやすく、立ちくらみや目の疲れがあり、爪がもろく眠りが浅い方は、血が足りない「肝血虚」が中心。夜間や明け方につりやすく、ほてりや腰膝のだるさ、乾燥を伴う方は、潤いが不足した「肝腎陰虚」で、高齢の方や更年期の時期に多くみられます。更年期の変化については更年期障害と鍼灸で扱っています。冷房や冷たい飲食で悪化し、温めると楽になる方は、冷えが筋を縮ませている状態。冷え体質そのものは冷え性と鍼灸をご覧ください。

そして忘れてはならないのが「脾」です。脾胃は食べたものから気血をつくる源。食が細く疲れやすい方は、そもそも血を十分につくれておらず、それが肝血の不足の背景になります。夏に脾胃が弱ることについては夏の土用と東洋医学で、疲れが抜けない気血の不足は寝ても疲れがとれない慢性疲労と鍼灸で扱っています。

鍼灸とお灸でできること

こむら返りに対しては、水分とミネラルの補給、ストレッチ、保温といった日々の養生がまず基本です。鍼灸やお灸はそこに並行する補助ケアとして、つった瞬間を止めるというよりも、つりにくい身体の土台を整えることを目指します。ふくらはぎの筋の緊張をゆるめ、下肢の血の巡りを促し、冷えを温め、筋を養う気血を支えていく——という関わり方です。夜間の足のつりに対する鍼灸の研究もいくつかありますが、規模や質はまだ限られており、「こむら返りが治る」というものではなく、つりにくい状態を整える補助、という位置づけです。

東洋医学的な見立てから、こむら返りによく用いられる代表的な経穴を紹介します。

  • 承山(しょうざん/膀胱経):ふくらはぎの筋腹の下、アキレス腱に移るあたり。こむら返りの代表穴で、局所の張りとけいれんに。
  • 陽陵泉(ようりょうせん/胆経):膝の外側の下。すべての筋を司る「筋会」とされ、筋のけいれん・緊張全般に。
  • 三陰交(さんいんこう/脾経):内くるぶしの上、指四本分。肝・脾・腎が交わり、筋を養う血を支える。
  • 太衝(たいこう/肝経):足の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前。肝の働きから筋を調える。
  • 太渓(たいけい/腎経):内くるぶしとアキレス腱の間。潤いを養う。夜間や年齢を重ねてからのつりに。

これらは「こむら返りにはこのツボ」という決まった処方ではありません。脉やお腹の状態、下肢の冷え・むくみ・張り、疲れ方、睡眠、食欲、年齢まで合わせて、血が足りないのか、潤いが乾いているのか、冷えて縮んでいるのか、脾胃が弱くて血をつくれていないのかを診分けながら、組み立てていきます。ふくらはぎという局所だけを追うのではなく、肝・脾・腎という全体から筋を養う——局所(承山)と離れた要穴(筋会の陽陵泉、血を養う三陰交)を組み合わせるのが、脉診流経絡治療の関わり方です。冷えて硬くなったふくらはぎには、お灸で温めることもよく合います。

つりにくい身体をつくる暮らし方

日々できることから始めましょう。就寝前にコップ一杯の水を。汗をかいた日や夏場は、水分にあわせて塩分・ミネラルも意識してください。豆類、海藻、ナッツ、青菜などをバランスよく。東洋医学の食養生では、赤身肉やレバー、ほうれん草、なつめといった血を養うとされる食材も、肝血を支える助けになります。

冷房で下肢を冷やさないことも大切です。就寝時は足元を冷やさない寝具やレッグウォーマーを、入浴ではシャワーで済ませず湯船でふくらはぎを温めてください。寝る前のアキレス腱伸ばしを習慣にし、日中はこまめに歩いて足首を動かすこと。ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、下肢の血液を心臓へ送り返すポンプです。ここが動けば、冷え・むくみ・つりの三つが同時に和らぎます。承山や三陰交、足三里へのお灸を養生に取り入れるのもよいでしょう。

水分もとっているのに、毎晩のように足がつって目が覚める——そんな繰り返しには、筋を養う血や潤いという別の角度から身体を見直すという選択肢があります。ご相談・ご予約は、足立区梅島・梅島駅より徒歩7分のはりきゅうはれ梅島院まで、LINEまたはお電話でお気軽にどうぞ。