冷え性は、室温がそれほど低くないのに、手足やお腹、腰などを冷たく感じる状態を指して使われる言葉です。鍼灸を探している方のなかにも、「体温を測ると平熱なのに寒い」「温めても、しばらくするとまた冷える」と話す方がいます。

冷えをすべて「血行が悪いから」「体質だから」と一つの原因で説明することはできません。身体の中心に保たれる温度、皮膚へ運ばれる血液、筋肉でつくられる熱、そして寒さの感じ方が重なって、冷えとして自覚されます。

この記事では、冷え性と低体温の違い、手足が冷たく感じる仕組み、東洋医学での見方、冷え性に鍼灸でできることを順にお伝えします。

冷え性と低体温は同じものではない

冷え性は、文献では「冷え症」と書かれることもあります。共通しているのは、ほかの人が寒いと感じないような環境でも身体の一部や全身に冷えを感じ、そのことがつらさにつながっている点です。日本人女性を対象とした調査でも、通常の室温で強い寒さを自覚する状態として冷えが調べられています。

一方、体温計で測る数字が低いことと、冷えを感じることは同じではありません。身体の中心部の温度は一定の範囲に保たれていても、手足などの皮膚温は環境や血流によって変わります。若い女性を対象にした小規模な実験では、軽い寒冷環境でも中心部の温度は保たれる一方、冷えを訴える人では指先の温度がより下がり、寒さの不快感も強くなりました。

つまり、平熱だから冷えの訴えが間違いということでも、冷たく感じるから身体の中心まで低温ということでもありません。低体温の原因と鍼灸でできることとは分けて考える必要があります。

体温が低くなくても手足が冷える仕組み

身体は、外気温が下がると皮膚の血管を細くし、表面から逃げる熱を少なくしようとします。これは中心部の温度を守るための正常な反応です。ただし、そのぶん手足の皮膚へ流れる血液は減り、指先や足先は冷たくなります。皮膚温が下がると、皮膚にある温度センサーから脳へ寒さの情報が伝わります。

もう一つの要素が熱をつくる働きです。食べ物から得たエネルギーの代謝に加え、骨格筋が動くと熱が生まれます。寒いときに身体が震えるのも、筋肉を細かく収縮させて熱をつくる反応です。長時間座ったままで脚や背中の大きな筋肉を使う機会が少ない日は、動いた日のような熱産生は起こりにくくなります。

このように、冷えには「熱を逃がさない」「熱をつくる」「寒さを感じ取る」という複数の仕組みが関わります。単に血液が手足へ届いていないと考えるより、身体が環境に合わせて配分を変えていると捉えるほうが実際に近い説明です。

冷え性の背景を一つに決めない

同じ「冷える」という言葉でも、出方は人によって異なります。季節に関係なく手足が冷える方、冷房の中でつらくなる方、緊張が続くと冷えを感じる方、上半身は熱いのに下半身は冷たい方もいます。生活環境、活動量、睡眠や食事のリズム、月経や更年期に伴う変化など、いくつもの要素が重なることがあります。

自律神経は、皮膚血流や発汗など体温調節に関わっています。冷え症のある閉経前女性43名を調べた研究では、冷えが持続する群で交感神経活動が高いという関連がみられました。ただし、小規模な観察研究であり、「自律神経の乱れがすべての冷えを起こす」とまでは言えません。

また、冷えを女性ホルモンだけで説明するのも単純すぎます。2025年の研究では、月経周期の違いによって全身の冷え感や手の冷感受性に明確な差はみられませんでした。冷えと月経や更年期の変化が同じ時期に現れることはありますが、一つの原因へ結びつけず、お身体全体の経過を見ることが大切です。自律神経の乱れと鍼灸については、別の記事で詳しく記しています。

東洋医学では、寒邪と陽気から冷えを読み取る

東洋医学では、冷えを温度の数字だけでなく、外からの寒さで気血の巡りが妨げられる「寒邪」と、お身体を温め動かす「陽気」の不足という両面から見ます。寒邪には「凝滞」と「収引」という性質があるとされます。冷えると巡りが滞るように感じることや、筋肉や関節が縮こわばることを整理する言葉です。寒邪は現代医学の診断名ではなく、冷えに伴う変化を捉えるための伝統的な見取り図です。

お身体を温める働きの土台には「腎」、飲食物から気血を養う働きには「脾」、その気血を滞りなく巡らせる働きには「肝」が関わると考えます。ここでいう肝・脾・腎は、現代医学の肝臓・脾臓・腎臓そのものではありません。腰や下半身の冷え、食欲や便通、疲れ方、緊張や冷えのぼせなどを、お身体全体のつながりとして考えるための機能概念です。

手足だけなのか、お腹や腰にも冷えがあるのか。朝と夜で違うのか、疲れた日に強いのか。温めると落ち着くのか、上半身のほてりと下半身の冷えが同時にあるのか。食欲、眠り、汗、月経などの様子も含めて確認すると、同じ冷え性という言葉のなかにある違いが見えてきます。

経絡治療では、冷えている場所へ一律に鍼やお灸をするのではなく、臓腑と経絡のどこに不足や滞りが表れているかを考えます。お身体全体の偏りを整える「本治」を軸に、いま現れている冷えに対応する「標治」を組み合わせ、その日の状態に合わせて経絡と経穴、鍼とお灸の刺激量を選びます。足先や下半身に限った冷えは、足の冷えと東洋医学で部位に焦点を当てて説明しています。

冷え性に鍼灸でできること

冷え性への鍼灸研究はありますが、現時点で効果が確立しているとは言えません。日本の19名を対象にしたランダム化比較試験では、鍼灸を受けた群と無治療群との間に、冷えの苦痛度の明確な差は確認されませんでした。厚生労働省eJIMの評価票でも、人数の少なさや評価方法を含め、今後の研究が必要とされています。

一方、成熟期女性49名を対象にした温灸とレッグウォーマーの比較試験では、温灸群で冷えの自覚や併存するつらさの変化が大きかったと報告されています。韓国で手足の冷えを訴える女性72名を対象にした研究でも、手技による鍼の群は無治療群より自覚症状と生活の質が変化しました。ただし、対象人数は限られ、偽鍼との比較ではなく、すべての冷え性へ同じ結果を当てはめることはできません。

こうした研究から、「鍼灸で冷え性が治る」「体温が上がる」と約束することはできません。はりきゅうはれ梅島院では、温度の数字だけを目標にせず、冷えを感じる時間帯や部位、冷えとともに現れる疲れや眠りなどを伺います。鍼やお灸を受けたあとの感覚も確認しながら、その方に合わせて気血のバランスを整えることを目指します。

温めても戻る冷えに、生活の流れから向き合う

冷えが気になると、厚着やカイロなど「外から温めること」だけに目が向きやすくなります。もちろん、冷える環境を避け、衣服や寝具を調整することは大切です。ただ、熱すぎる温度や長時間の温めを我慢する必要はありません。心地よく続けられる範囲を基準にします。

座っている時間が長い日は、合間に立ち上がり、脚や背中の大きな筋肉を動かすことも、熱をつくる機会になります。食事を抜いた日や睡眠が乱れた日など、冷えが強くなる条件を一度に決めつけずに振り返ると、自分の冷え方の傾向をつかみやすくなります。

一つの方法で変化がなくても、努力が足りないわけではありません。環境、活動、休息を少しずつ見直しながら、お身体の状態を確認していくことが大切です。

足立区梅島で、繰り返す冷え性をご相談ください

冷え性は、体温計の数字だけでは表しにくいお悩みです。検査で大きな異常はないと言われても、手足やお腹の冷えで眠りにくい、仕事に集中しにくいなど、日常でつらさが続く方もいます。

はりきゅうはれ梅島院では、「冷え性」という名前だけで同じ治療に揃えず、どこが冷えるのか、いつ強くなるのか、ほかにどのような変化が重なっているのかを伺います。東洋医学の視点からお身体全体を見て、その日の状態に合わせて鍼やお灸を選びます。

足立区梅島で冷え性や手足の冷えにお悩みの方は、LINEまたはお電話(03-3889-0546)でご相談ください。梅島駅から徒歩7分です。